AFP記者を小さな畑に案内してくれたアシェナフィ・チョテ(Ashenafi Chote)さん(25)は、頭を振りながら、後悔を口にする。「わたしは間違っていた。(バイオ燃料開発企業の)申し出を受け入れるべきではなかった」
首都アディスアベバ(Addis Ababa)から南に350キロのウォライタ(Wolaytta)地方ソド(Sodo)は、たびたび干ばつと水不足に見舞われてきたが、アシェナフィさんの畑は過去10年間、家族4人分のおなかを満たすのに十分な食糧を供給してきた。余剰分は市場で売ることもできた。だが、数か月前にバイオ燃料用作物の栽培に切り替えて以来、貴重な収入源が枯渇してしまった。家族は今や、支援団体の援助物資に頼らざるをえなくなっている。
ウォライタ地方では、地元民の主食であるトウモロコシ畑が、トウゴマ畑にゆっくりと姿を変えつつある。
貧困国エチオピアは、原油価格の高騰でさらなる打撃を受けた。そこで政府は、前年に制定した国家プロジェクトの一環として、40万ヘクタール以上でバイオ燃料用作物を栽培する計画を打ち上げた。バイオ燃料の開発は、現在も高く推奨されている。エチオピアの耕作地は全土の18%に過ぎないが、外資系にはインセンティブ(奨励金)が用意され、稼働までのプロセスが比較的容易なこともあり、海外のバイオ燃料開発企業の参入が相次いでいる。
水資源・鉱山エネルギー省は「既存の農地をバイオ燃料用に転換することはありえない」としているが、ウォライタ地方では、アシェナフィさんら数千人の農民が「主食であるトウモロコシ、キャッサバ、ジャガイモの栽培をやめて、バイオ燃料用作物を栽培するよう、言葉巧みにだまされた」と憤る。
農民たちによると、米国・イスラエル系のGlobal Energy Ethiopia社は当初、ヒマシ油を生成するトウゴマの栽培用に2700ヘクタールを確保し、「年間で3回収穫できる。50ドルの賃金を支払う」などと言ってトウゴマの栽培に誘導した。しかし、6か月たっても収穫はなく、賃金も支払われていないという。
現在、この地方では9500人以上がトウゴマを栽培しているが、その大半が従来の農地を使用している。これについて、親会社のGlobal Energy社は、「トウゴマについては、農地の3分の1を超える栽培は許可していないので、食料生産の低下を招いてはいない」と反論する。また、地元民に対し教育、医療などのサービスを提供する計画があり、環境保護にも尽力していると主張する。賃金の不払いについては、「銀行ローンの受け取りが遅れているため」と説明した。
一方、環境保護活動家らは、トウゴマを栽培する農家に対し、栽培をやめるよう呼びかけている。「食料の確保が厳しい地域でバイオ燃料用作物を栽培することは、許されるべきではない」と、ある活動家は話した。
・コメント
食料を確保できない地域でのバイオ燃料の栽培はまさに死活問題だと思います。食料政策は政府が誘導するものですが、こういった発展途上国において補助金などほとんど無く、バイヤーのお金に目がくらんだのも分かる気がします。
食糧危機が外国の企業によって引き起こされ、世界がその国の食糧支援に回っていたのでは本末転倒です。ここがバイオ燃料のデメリットです。
しかし、このデメリットは、やり方次第で解消されます。農地の新規開発です。転作は認めず、新たに農地を開拓していけば食糧生産は落ち込むことはありません。ただし、一次産業に労働者が大規模にシフトすることになります。市場価格に翻弄されるひとが増えれば、生活が安定せず雇用不安、大量の農地に流す水の問題等など、新たなデメリットもでてきます。
低価格な賃金でバイオ燃料ができるからといって、こういった発展途上国で、生産性の低い農業をおこなうのはやはり難しいのかもしれませんね。
参考 バイオ燃料 WIKI
産業用燃料は、第二次オイルショックで原油価格が1バーレル4ドルから17ドルに値上がりしたのを契機に石油より安価な石炭・天然ガス・原子力等で代替されたが、1980-2000年の間、輸送用燃料は原油価格1バーレル15ドル前後だったため代替燃料は採算が合わなかった。しかし、中国・インドの自動車の普及・経済発展による輸送燃料需要の急増により2005年-2008年にかけて原油価格が1バーレル150ドルに暴騰し、地球温暖化問題による CO2削減要請の高まりもあって、近年低コスト輸送用バイオ燃料の研究開発・実用化が大きく進展している。
種類としては下記の3つに大別される。2008年現在、原油価格高騰は航空産業、漁業に大きな打撃を与えているが、動植物油のジェット燃料や船舶用デイーゼル/焼玉機関への適用研究は自動車燃料への適用研究に比べて後手に回っており、生焚きした場合の問題点の解析、必要とされる化学処理の研究が急がれる。
イオ燃料が普及する、あるいは増産するに当たり、以下の課題が存在している。
* バイオ燃料は植物を利用する(有力なのがサトウキビ、小麦、トウモロコシ等である)。大量に増産するには当然ながら作物が大量に必要となるが、特に政策などで推奨するなどしない限り、作物の耕作面積が急速に増えることはありえない。そのため、現在の生産量の中から穀物を利用することになるわけだが、全体的な生産量が上がっていない状態で需要だけが伸びることにより、穀物の値段が上がる、あるいは不足するのではないかという懸念がある。また、バイオ燃料に使用される作物への転作が行われることで、バイオ燃料としては不向きな作物も高騰、不足に陥る可能性がある。特に日本の場合、食料自給率は40%程度(カロリーベース)であり、燃料に回す分があるのかという指摘もある。食用作物以外での生産技術の開発が望まれている。
o 結果的に、日本は輸入穀物の価格の高騰による影響を受けている。実際、2007年の後半から特に穀物を使うマヨネーズ、食用油、肉製品、カップ麺、お菓子などの日用品について、原材料の価格高騰によりメーカー側が値上げを発表するなど、徐々にその影響が出始めている。
* 2007年4月現在は自動車用のガソリンとしてのみの利用であり、また、暖房など、他の分野でも応用できないこと等を考えるとまだまだ発展途上の段階であると言える。
* 現在のところ、生産コストがガソリンのそれよりも幾分高く、日本の税制上、ガソリンと同じ扱いを受けるため、販売価格が高くなってしまう。2007年4月からの試験販売では、ガソリンとの差額分を経済産業省、石油連盟が負担している。
* バイオ燃料そのものは二酸化炭素排出量は減ると言われているが、生産プラントの建設や、生産、輸送(2007年7月現在、日本で販売されているバイオ燃料はフランスから輸入されているものである)の各段階でどれほど燃料が消費され、二酸化炭素が排出されるか、実際に大量に生産を始めてみなければ分からない。プラント建設、あるいはバイオ燃料の元となる穀物を栽培する用地確保の為に森林を伐採するのでは元も子もなくなってしまう等、生産から使用までトータルで計ると環境に悪影響を及ぼすのであれば意味がないとする意見もある。ただし穀物用の畑については現在各地で農家の引退や生産者の不足などを理由に土地が余っている傾向にあり、宮城県登米市ではバイオ燃料用に休耕田で多収穫米試験栽培が始まっており、コストダウンが最大の課題だという。
* バイオ燃料はその特性上熱に弱く、一定温度以上の場所に置いておくと酸化されてしまう性質がある。ゆえに保存場所や容器等を選ぶ側面があるため、自動車や飛行機等の燃料として利用する場合、燃料タンクの改良が必要になる可能性もある。これらの問題もバイオ燃料の生産コストを引き上げる要因となっており、大量生産に繋げる為にはハード面の技術革新も同時並行で進める必要がある。また将来的に採算性がとれるかどうかは実際にやってみないことには分からない為、進化した先の未来像を予測することは困難である。
* 一般の燃料に比べ亜酸化窒素の放出量が二倍である。亜酸化窒素は二酸化炭素の約310倍の温室効果を持つため、地球温暖化を防止するどころか、かえって地球温暖化を促進させるのではないかとパウル・クルッツェン博士などが指摘している。
* 地球温暖化は複数種の温室効果ガスが引き起こしているという面がある。その為、二酸化炭素だけを削減したとしても結果的にそれが問題の解決に繋がるかと言えば、必ずしもそうとは言えない実情がある。よって、バイオ燃料に頼るだけでなく、総合的な温室効果ガスの削減が実現できなければ、地球温暖化問題の根本的な解決に繋がらない恐れがある。
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