経済産業省と環境省は18日、携帯音楽プレーヤーなどの使用済み小型家電からのレアメタル(希少金属)確保を目指し、早ければ年内にも回収モデル事業を立ち上げ、早期に本格的回収を図ることにした。回収ルートのある携帯電話と違い、小型家電は埋め立て処理されるケースが多く、回収できれば、金やパラジウムなどの有効活用が期待できる。
モデル事業のあり方は12月2日に立ち上げる研究会で検討する。複数の自治体の協力を得て、公共施設だけでなく、スーパーやコンビニエンスストア、駅などの集客施設に回収ボックスを置くことが想定される。
経産省などでは、大掃除のゴミが大量に出る年末までにモデル事業を始めたい考えだ。また、モデル事業の結果を踏まえ、年度内に回収方法のあり方について一定の報告書をまとめる。モデル事業の回収率が悪ければ、回収の義務化なども検討されそうだ。
携帯電話やデジカメ、ゲーム機、パソコンといった小型家電の部品には金や銀、パラジウムといったレアメタルが大量に使用されている。天然鉱石より含有率の高いものあり、「都市鉱山」とも呼ばれている。金の場合は天然の鉱石と比較すると80倍にも達する。独立行政法人物質・材料研究機構の試算によると、国内の都市鉱山埋蔵量は金で6800トンと、世界の埋蔵量の16%に上る。半導体などに使われるアンチモン、インジウムなども世界埋蔵量の10%を超える。
同研究機構の原田幸明材料ラボ長は「パソコンを筆頭に小型家電にも多くのレアメタルが使われており、小型家電に使われているレアメタルの総量は携帯電話を超える可能性がある」として、早期の回収体制確立の必要性を指摘している。
「資源大国」への一歩
経産省と環境省が小型家電の回収ルートの確立を目指すのは、回収実績のある携帯電話と違い、小型家電が他のゴミと同様に埋め立てられている実態があるためだ。回収後の製品からどうレアメタルを取り出すかなどの課題はあるが、個人情報の流出懸念の少ない小型家電は、ルートが確立すれば、都市鉱山の有効利用による資源大国に一歩近づく。
携帯電話は現在、販売店経由で回収されており、2007年度は644万台回収した。NTTドコモでは同年度に回収した340万台から、金(128キロ)や銀(377キロ)、パラジウム(12キロ)、銅(2万8769キロ)のほか、コバルトやニッケルなどを取り出した。
ただ、回収台数は減り続けており、07年度は2000年度のピーク時(1361万台)の半分以下にとどまる。回収台数の減少は、電話帳などの個人情報の流出に対する不安のほかに、保存した写真やメールをそのまま手元に残したり、ダウンロードした音楽やゲームなどが著作権保護の関係から新しい端末に移せない問題もある。デジタルカメラやDVDプレーヤーなどでは問題の生じる可能性は低いが、小型家電でも音楽情報などをダウンロードできる携帯音楽プレーヤーでは、同様の問題が起きる可能性もある。また、“含有率”の高い携帯電話と違い、製品重量に比べて、レアメタルが少ないことも問題だ。
製品ごとにレアメタルがどれだけ含有されているかの調査も求められるし、効果的なレアメタルの抽出方法の検討も必要だ。しかし、課題を乗り越えて回収が進めば、埋め立て処分されていた小型家電のレアメタルは、確実に日本の資源になっていく。
抜粋 フジサンケイビジネスアイ http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20081119-00000011-fsi-ind
・コメント
レアメタルリサイクルは資源小国日本が生き残るには本気で考えなければならない課題です。新興国の需要拡大を背景に、インジウムやリチウムなどレアメタル(希少金属)をめぐる国際的な資源争奪戦が激化し、需要が逼迫しています。
ガリウムはあと数年で使い果たしてしまう恐れがあり、インジウムの埋蔵量も10年程度しかもたない可能性も示唆されています。同じようにハフニウムは2017年には枯渇し、亜鉛も20年以内に枯渇すると予測されています。銅の埋蔵量はまだ多い方ですが、世界的需要が供給可能量を超えるため、今世紀中には枯渇するといわれています。
物質・材料研究機構(NIMS)の試算では、日本の都市鉱山に眠る“埋蔵量”について、年間供給量で金は 6800トンとなり、世界の天然資源埋蔵量の16%に相当し、世界トップの資源量、銀も22%に当たる6万トンと首位。さらに、需給が逼迫する液晶パネルに使用するインジウムは、61%に相当する1700トンが眠っており、全世界の消費量の約4年分。電池材料として需要が急拡大するリチウムは世界消費の約7年分、プラチナは約5年分が埋蔵されています。
都市鉱山は天然鉱山よりも、資源含有量が高いそうです。プラチナ類は天然鉱石1トン当たり平均約3グラムしか含まれておらず、自動車のマフラーに使われる排ガスをきれいする重さ1 キロ程度の触媒1個当たり1グラム程度が使われています。鉱石と同じ1トンの触媒を集めれば、300倍以上の1キログラムものプラチナが採取できます。
原田幸明・材料ラボ長は「今からきちんとリサイクル制度を整備すれば、日本は資源を輸入だけに頼る必要はなくなる」と話しています。しかし残念なことに、国内には効率的な回収システムが整備されておらず、貴重な“ 国産”資源が、中国からの買い付け業者などに流れるケースも多そうです。
このような現状にも関わらず「緩やかな規制で自発的な回収を促す」(経産省)というのが基本方針で、回収の義務化を行っていません。枯渇が見えている資源管理を政府は怠っています。遠くの資源国から多くのリスクを抱えて船で運ぶやり方を推薦しているのでしょうか。
ドイツが行っている太陽電池エネルギーのようにリサイクル資源買い取り制度を実行し、税金である程度補うようなシステムにすれば国内のレアメタルは加工される前に海外に流出することはありません。環境技術が進んだ日本でレアメタルは加工されるほうが地球環境にとっても利益があると思います。
都市鉱山の発掘は、個人の環境意識がカギを握っているといえることには変わりありません。あちこちに回収ボックスを置いて、携帯電話やパソコン、プリント基板などを入れる態勢を整えれば回収率は上がると思いますし、活動に協力するレアメタル提供者への謝礼支払い等を税金でまかなうなど、リサイクルの活性化するための策は多数あるはずです。
携帯電話1台には金が7ミリグラム弱含まれており、1キロの金には約17万台が必要となる計算です。環境に優しい「循環型社会」に近づくには、企業や家庭に埋もれた資源回収とリサイクルの同時進行が不可欠になっていくことは間違いありません。
参考 レアメタル WIKI
非鉄金属のうち、様々な理由から産業界での流通量・使用量が少なく希少な金属のこと。レアメタルは非鉄金属全体を呼ぶ場合もあるが、狭義では、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等のベースメタル(コモンメタルやメジャーメタルとも呼ばれる)や金、銀等の貴金属以外で、産業に利用されている非鉄金属を指す。
多くのベースメタルや貴金属は、世界の主要な商品取引所、たとえばロンドン金属取引所(LME)やシカゴ・マーカンタイル取引所(CME)、ニューヨーク商品取引所(COMEX)などで日々売買され市場価格の透明性が確保されている。一方、ほとんどのレアメタルは実需流通規模が小さく公正な市場価格の形成維持が困難なため、商品取引所に上場していない。代わりに、経済紙や金属専門雑誌、Webニュースでの流通価格情報が取引の指標として用いられており、取引の透明性や即時性、流動性に乏しい。
一般にレアメタルが希少な理由は、
1. 地殻中の存在量が比較的少なく、採掘と精錬のコストが高い
2. 単体として取り出すことが技術的に困難
3. 金属の特性から製錬のコストが高い
といった点があげられている。
・レアメタル権益を確保せよ 商事・物産、譲れぬ安定供給 フジサンケイビジネスアイ http://www.business-i.jp/news/sou-page/news/200811240023a.nwc
総合商社がレアメタル(希少金属)確保に奔走している。技術立国日本にとって、レアメタルはハイブリッド自動車の駆動モーターや液晶パネルなどハイテク製品に欠かせない素材。世界的な景気後退で価格は下落傾向にあるが、将来的には新興国の需要拡大による需給逼迫(ひっぱく)の構図は変わらない。その多くが中国や南アフリカなど一部の資源国に偏在しているため、新興国の資源ナショナリズムの動きと相まって安定供給への危機感はぬぐえない。
三菱商事は電気自動車(EV)のバッテリーに必要なリチウム確保に向けて南米のボリビアで権益確保に動く。三井物産はカナダや豪州でレアアース(希土類)鉱山の権益確保を目指し、調達先の多様化を進める。政府も石油や天然ガス同様に重要資源に位置づけ、民間の動きを支援する方針だ。
≪EV普及の“代償”≫
「電気自動車のビジネスでバリューチェーン(川上から川下までの事業網)を構築するには、上流のリチウムの権益確保まで手がける必要がある」
三菱商事の三島公人・自動車関連事業ユニット室長はこう力説する。同社は三菱重工業とともに大株主として、三菱自動車の再建を支援する。その切り札の一つが、2009年夏に市場投入するEV「i MiEV(アイミーヴ)」だ。初年度2000台、その後は年間1万台を販売する計画だ。
この次世代EV車普及のカギを握るのが、ガソリンなどに代わる動力源に採用されたリチウムイオン電池の開発であり、その材料となるレアメタルのリチウムの安定確保だ。
三菱商事の試算によると2015年ごろまではリチウムの供給能力は市場需要を若干上回って推移するが、20年代には技術革新や地球温暖化防止対策を理由に、世界の自動車の半数がガソリンからEVへシフトすると予想。そうなると原料の炭酸リチウムの需要は約40万トンと、現在の生産量の約4倍超に急拡大し、「現状の供給体制では到底追い付かない」ことから、権益確保に動いた。
第1候補は南米のボリビアだ。リチウム資源の埋蔵量で世界の半分近くを占めるが、高地ということもあって生産面ではまだ手つかずの“宝箱”。ボリビア側もウユニ塩湖周辺でのリチウム生産を検討中で、三菱商事が事業参画を狙っている。
≪「脱中国」を模索≫
「技術立国の日本としては必要な金属で、安定供給を目指し権益投資を進めたい」
国益も見据えて権益確保を進めるのは、三井物産の佐藤洋一・レアメタル室長。中国などの資源囲い込みで価格が高騰した“レアメタル・パニック”により、取引先から「安定した価格で供給できないか」との要望を受け、07年8月に専門部署を立ち上げた。同社が最優先で調達先の確保を急ぐのは、レアアース、タングステン、プラチナなどを含む白金属の3鉱種。いずれも代替が困難で、生産や埋蔵量が一国に偏っている資源だ。
特にレアアースのランタン、セリウムはトヨタ自動車の「プリウス」などハイブリッド車(HV)に使われるが、その生産・供給を牛耳るのが中国で、レアアースの市場占有率は98%。ダイヤモンドに次ぐ硬度を持ち、自動車部品などを削る超硬工具の素材に使われるタングステンも中国に大きく依存する。
中国政府は国内需要を優先させようと、レアアースの事実上の輸出規制に動き、資源の国家管理を強化しており、三井物産は「脱中国」の可能性も探る。日本と貿易面で友好国のカナダや豪州に照準を合わせて、新たな供給先の開拓を進める。
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■VS資源メジャー 政府支援
“資源小国”だけに、レアメタル確保には日本政府も総合商社の動きを支援する態勢を強化している。
経済産業省は、南アフリカに資源が偏在し、自動車の排ガス用触媒として欠かせないプラチナ(白金)、液晶パネルに使われるインジウムなど17鉱種を重要で希少性の高い主要レアメタルとして定義。昨年11月には官民合同で南アフリカなどに調査団を派遣し、資源外交を展開した。
独立行政法人の石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)も、ボツワナなどアフリカ南部でのレアメタル権益確保に向け探査を進める。
スケールメリットという規模を追求する大手商社は、従来は「レアメタルのように規模の小さい商売はなじまない」と権益取得には消極的だったが、レアメタルがハイテク製品の生命線を握り、供給安定に支障が出る事態も想定されることから、方針転換した経緯がある。
ただ、権益獲得の道のりは険しい。マダガスカルに世界最大規模のニッケル権益を持つ住友商事は、今後の権益確保の見通しとして「すでに資源メジャーの寡占化・囲い込みが進み、今後の優良権益はカントリーリスクの高い国や地域になってくるだろう」と分析する。中国だけでなく、ボリビアも資源はビジネスになるとみて国家管理を進めている。
その一方で、追い風もある。 米国発の金融危機により「投資ファンドなどが市場から撤退し、権益確保の面では適正評価による交渉が行える環境になってきた」(丸紅)とみる向きもある。
「レアメタル・パニック」を過ぎて実勢価格に近づいてきた今こそ、権益確保の商機到来と読んでいる。日本が得意とする産業技術、そして技術立国を、素材調達の面では総合商社が支える役割を果たすことになりそうだ。

